2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催に向け国を挙げてICT化が進んでいます。デジタルマーケティングにおいても、IT分野への投資が進み、AI、VR、データ活用、マーケティングオートメーション(MA)化などのアドテク技術が広がりつつあります。
宿泊業界が直面している課題は
①人材不足、②生産性の向上、③販売チャネルのデジタルシフトなど挙げられますが、今後を見据えて従来のやり方を見直し、MAを導入し自動化による作業減少、「顧客」対応から「個客」対応にシフトし、「個客」中心のマーケティング活動を行うことが重要と考えます。
■自動化のメリット
無駄を無くし、作業効率を高める
MAで一般的に考えられるメリットは、自動化による作業の減少が挙げられます。簡単な作業の部分をMAで対応し、より時間をかけるべきところにリソースを使うことができる。無駄な時間を無くし、長時間労働の見直しを行う。作業の効率化という点は、政府が改革を進めている生産性の向上、働き方改革へとつなげることも可能です。
■「顧客」対応から「個客」対応へ
One to Oneマーケティングの必要性
One to Oneマーケティングとは、マスマーケティングと真逆のマーケティング手法です。
SNSの普及により情報過多の現代において、従来のマスメディア広告のように一斉に伝える広告手法の効果が薄れてきています。今後は、企業がマーケティング活動を行っていく際に、顧客一人ひとりの趣向や属性などを基とした上で、顧客に対して個別にマーケティングを行っていくことが見直されています。
何かについて知りたい、調べたいと思ったとき、一人一人が検索して情報を個人的に収集します。その過程において、昨今のIT技術、とりわけCookieと呼ばれるものの開発によりWebサイト側が閲覧者を識別できるようになり、その閲覧者に合った情報をブラウザ内に表示することができます。MA化を行う際に、 One to Oneマーケティングは必須の対応です。
■チャットbot
AI(人工知能)を活用して、人間との対話に自動応答する
チャット型コミュニケーションツールの利用が増えていますがOne to Oneマーケティングの取り組みとして、ウェブサイトにチャットを導入、個別に対応すること取り組みが進んでいます。
個客からの問い合わせ・質問に対してロボットによる対応の自動化によりコスト削減をしながら、個客サポートを行い、業務効率の改善につながります。
チャットbotの導入に際に、重要な事は「事前のシナリオ設計」を綿密に行うことです。個客からの質問を想定し、どのように返答すべきか。その返答に対して、更に質問された場合に、どう対応するのか。
最初の設計が甘いと、ロボットの回答の精度が低くなり結果、個客の不満をかうことになるので注意が必要です。
導入事例:https://www.kobe.hotelokura.co.jp/sightseeing/nightview.html
■パーソナルアプローチ
デジタルマーケティングとOne to Oneマーケティングを融合させる
ブラジルの航空会社が行った「THE OWNBOARD MAGAZINE」という施策はOne to Oneマーケティングと顧客のFacebookアカウントとの連携により実現させた内容です。この取り組みにより、すべての顧客が紙面を持ち帰り、機内での閲覧時間も平均で12倍に伸びたようです。
紹介動画 https://www.youtube.com/watch?v=ZhbIQNtL8JE
バハマのナッソーにある高級リゾートホテル「アトランティス・パラダイス・アイランド」のOne to Oneマーケティングと動画を活用した事例です。
宿泊予約をしたゲストに対し、予約1~3日後と到着30日前、到着1週間前の3回メールを送り、施設の案内やオプションの申し込みを促しています。この取り組みにより、予約時点での旅行費用から13%増加、到着後も含む全体では利用金額が9%増加につながったようです。
紹介動画 https://www.youtube.com/watch?v=f-2PToDRhSM
■パーソナライズメルマガ
マス型メルマガから個別メルマガへ
一般的なメルマガ配信は、1つの情報を一斉大量配信するマス型メルマガがほとんどですが、そのようなメルマガでは開封率、実際に予約となるコンバージョン率が低下します。今後は、One to oneマーケティングの基本である顧客中心に「いつ(タイミング)、誰に(個客)、何を(オファー)、どのように配信するべきか」設計して、One to oneメルマガ配信をすることで、開封率、コンバージョン率の向上につながります。
海外のマーケティングトレンドにおいて、GoogleやFacebookなどのプラットフォーム経由の集客ではなく、個客をセグメントし属性ごとに、One to oneメルマガを配信することが見直されています。
■まとめ
2018年はマーケティングオートメーション(MA)によるOne to Oneマーケティングがトレンド。
コンテンツマーケティングから始まり、それを自動化するマーケティングオートメーション、AI、DMP(データマネジメントプラットホーム)を連携させることにより、ITが多くのマーケッターを手助けし、個客へのアプローチを容易にしています。
デジタルデバイスの発達により多くの人たちが情報を検索し、比較検討するようになった現代において、ユーザーは自分だけの体験というものを求めています。
宿泊業界が得意とするおもてなしの精神をデジタルマーケティングにも取り入れ個客に対して、きめ細かい対応とテクノロジーを掛け合わせて実現することがデジタルマーケティング時代の勝ち組ホテル・旅館になるではないでしょうか。