旅先、移動先で滞在するホテルや旅館を皆様どのように選びますか?
場所、価格、特典、利用目的など、様々な要素から、滞在先を決定すると思います。
主観的な尺度で滞在先を絞りつつ、第3者の意見やコメントも重要な決定要素になります。
2015年12月にトリップアドバイザーが発表したプレスリリース※によると、
日本人の旅行者の宿泊先決定に影響を及ぼすものトップ5は以下のようになりました。
①トリップアドバイザー 75%
②旅行者が投稿したコンテンツ 67%
③旅行のガイドブックやカタログ 60%
④友達と家族から聞いた情報と推薦 55%
⑤公式のホテルの評価スコア(観光協会が認定する星の評価)54%
※参照元:プレスリリース:世界最大規模の旅行動向調査「トリップバロメーター 旅のトレンド 2016」
世界最大の旅行コミュニティであるトリップアドバイザーに登録し、施設様のクチコミを管理することは、集客にもつながる大切な施策となります。
トリップアドバイザーはクチコミの評価を独自のアルゴリズムで、施設様を地域ごとに人気ランキングで表示しています。
ランク付けのアルゴリズムは企業秘密として、トリップアドバイザーは詳細を発表しておりませんが、2016年5月にそのアルゴリズムを変更したと発表!※
変更後のアルゴリズムについてすこし説明がありますので、こちらで簡単に紹介すると、
・クチコミの件数は少ないより多い方がよく
・肯定的な内容のクチコミは否定的な内容のクチコミに勝り
・クチコミの投稿時期は古いよりも新しい方が良いのです。
こうした要素を組み合わせて人気ランキングを決定している、とのこと。
※参照元:TripAdvisor Insights トリップアドバイザー人気ランキングのアルゴリズムの変更
そこで、ホテル・旅館施設の皆様は、「どうやってランキングを上げる良いクチコミを集めよう!?」というところにたどり着きますね。
実は私は、前職は都内の某ホテルでマーケティングの担当を務めており、クチコミを管理することも一つのタスクでございました。
クチコミをの数を増やすだけでなく、お客様からより良いクチコミやホテルでのポジティブな滞在体験を投稿してもらおうと、客室やロビーに告知ツールを配置し、顧客へのアプローチを心がけていました。もちろん、定期的に接客サービスのトレーニングを行うなどスタッフのサービスの質向上のための教育は当然のように行っていました。
ところがトリップアドバイザーのランキングが大きく上昇するような変化はなかなか見られず、
宿泊部やカスタマーサービスの責任者と、どうしたらお客様から高い評価を得られるだろうか、と話し合いを続けておりました。
あるとき、
宿泊の現場のスタッフが、
「トリップアドバイザーって、人気ランキングがあるんだ・・・」と一言。
マーケティング担当の私として、トリップアドバイザーの人気ランキングは当たり前のことでした。ところが、宿泊やレストランなどお客様と直接触れあう現場で日々働いているスタッフ達は、トリップアドバイザーの詳しい仕組みなんて理解しているひとは少ないかもしれないと、気づきました。
現場で働くスタッフ数人に聞き込み調査をしてみると、トリップアドバイザーというくちこみサイトがあることすら知らないスタッフがいました。
そこで、クチコミを使って社外へマーケティング活動する前に、
「クチコミとは」、「トリップアドバイザーとは」、「人気ランキングとは」、というところを
社内教育することにしました。
施設の大きさにもよりますが、私はホテルとしてお客様との接点が一番多い宿泊部のベルサービスから教育を始めました。
クチコミが影響するところ、トリップアドバイザーとは、人気ランキングの仕組みなど、概要を説明し、
目標値(KGI KPI)を定めました。
①KGI:現在のランキング〇〇位を〇〇位に上げる
②KPI:良いくちこみ(トリップアドバイザーでいうバブル4または5ポイントのクチコミ)を月間〇〇件受信。そのうち宿泊:ベルサービスに関するクチコミを月間〇〇件受信。
具体的なアクションとしては;
①クチコミ収集ツールの作成
(物理的なクチコミ収集ツールとして、トリップアドバイザーの施設サイトのURLを記載したスタッフの名刺を用意。)
②顧客との接点でどのようにツール(名刺)を使用するか、シナリオの作成、実施。
(チェックインのサポートをしたり、客室までご案内したり、ルームサービスをお届けしたり、ロビーで道案内をされたり・・・ベルのスタッフはお客様と触れ合ったら、できる限り自分の名前をお客様に伝え、滞在中に今後何か困ったことがあったら声をかけてほしいとパーソナルなサービスをアピール。そして、ホテルの滞在中の思い出をぜひトリップアドバイザーに投稿してほしい、と一言添えて名刺をお渡しするという、シナリオを作りました。)
「私たちは良いクチコミがほしい!」
そのためには、スタッフ一人一人がお客様の窓口となり、名刺を渡すことにより自分のサービスにより責任感が増す。それが自然に「質の高いサービスの提供」することになり、「お客様一人一人に、上質なホスピタリティ」を体験してもらうこととなりました。
クチコミの受信数は季節や客室稼働率により緩やかに変動を起こしましたが、急激な増加にはつながりませんでした。
ところが、個人的なスタッフの名前を出して褒めていただけるクチコミが、このプロジェクトをスタートする前は3か月に1件ほどだったものが、
毎月2-3件、ベルスタッフの名前を挙げてお褒めいただくようになりました。
そして、このプロジェクトをスタートさせて約半年後、ランキングが約10位ほど上昇したのです。
漠然と「ゲストに良いサービスを提供する」という目標が
トリップアドバイザーで高い評価を得て、良いクチコミの数を〇件受信する、ランキングを〇位にするという明確な数値目標が、カスタマーサービスの向上につながりました。
「トリップアドバイザーでランキング上位にいるホテル」=「良いサービスを提供するホテル」
という方程式がすべてのケースに当てはまるとは限りません。
ただ、具体的な数値目標をもってスタッフひとりひとりがお客様に積極的にアプローチし、ご滞在中のサポートをそのスタッフが責任をもって行う。
そしてお客様に心地よい滞在を体験してもらい、ハッピーな思い出を作れるようスタッフが手助けをすることができたなら、施設側が導かなくても、
自然にお客様はトリップアドバイザーのようなクチコミサイトや、自身のソーシャルメディアでその体験をシェアしたくなるはずです。
積極的に口コミを収集することが施設の課題にありましたら、まずは施設内でお客様と接点があるスタッフにクチコミについて、そしてその効果(トリップアドバイザーのランキングなど)についてを、ぜひレクチャーしてください。そのあとで、お客様へのアプローチ方法(名刺や館内告知)を実施することをお勧めいたします。
施設の規模、スタッフの数、顧客の属性、施設としてのクチコミやソーシャルメディアの取り組み方・ルールなどにより、定める目標やアクションは異なってきますが、
弊社が取り組むUSPコンサルティングと同様、各施設様のお客様が求める「宿泊体験」を分析することにより、スタッフが提供すべきサービス、お客様へのアプローチ方法が浮き彫りになるはずです。